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私の頭の中の消しゴム

私の頭の中の消しゴム_e0033713_891488.jpgビバシティシネマ

社長令嬢と現場監督の恋。お決まりの親の反対を無事乗り越えて結婚したしあわせもつかの間、妻は若年性のアルツハイマーに侵されていた。
“あなたの事も忘れてしまう。その前にしあわせなまま別れて。”
と泣く妻に
“僕が覚えている。僕が君の記憶だよ。”
と言う夫。
けれども病の進行は容赦がなく、夫に『愛してるわ・・・。』と以前の恋人の名で呼びかける妻・・・・

くか~っ!!
なんだか恥ずかしいぞ。

二人の出会い、結婚・・・相変わらず突っ込みどころ満載。てか、少女マンガでも今更もう誰も描かんで、というような恋と新婚生活ですが、    ほほえましいよ。
そしてやっぱり悲しいよ。
涙ぽろぽろです。
帰りの車の中でも泣けてきたのは初めてです。

お年寄りの認知症は何人も目の前にした。
介護の施設にしても現状にしても社長令嬢の彼女とは違いすぎる。
あんなにきれいなはずはない。
でも、同じことも一つある。

それは、自分が壊れていくことへの不安だ。

『呆けてる本人はしあわせだよね。何の苦もなくて・・』
という言葉をよく聞くけれど、実はそんなに生易しいものではない。
痴呆が進んでいく過程は自分で自覚できるのだよ!! 
“あれ?こんなこともわからない。私はおかしいんじゃないか・・”
“いやまだわかる、おかしいわけじゃない・・”
の繰り返し。

ばあちゃんらは決まってカレンダーに×を付けだす。
日記を付けだす。
自分が今日が何日かもわからないと知った時の不安はどんなのだろうか。
新聞を見て、“今日は○日。大丈夫、まだわかる。”
日記を見て、“昨日は・・そうそう、アレをした。まだ覚えている。”
そんな事をしなければならないこと自体、深刻だという現実をごまかし、不安と戦う日々。

そして相槌がとても上手になる。
“ああそうそう、こないだはお世話になったわね。”
と話を合わせながら目は泳いでいる。何の話だかわからないのだ。

十代の頃、40を越えたおばさんたちなんて別の生き物と思っていた。
でも今、やっていることは少し変わっても、昔と同じようにものを考え、同じような毎日の中で日々が連続している。
それは80になっても同じ。心はずっと連続している。
そう、歳をとっていようと20代であろうと不安は全く同じ。

毎日、毎日、だんだんとわからなくなっていく自分を見つめていないといけないとしたら・・・
そして最愛の人を別の人の名で呼んだことを突然自覚した彼女のように、時々“こんなこともわからないのか!”と愕然としないといけないとしたら・・・

認知症というのは厳しい病気です。

    と・・・映画と少し離れてしまいました。

彼女が漏らしたおしっこを自分の服で拭く彼。
見守るものもまた大変です。
でも、あんなに愛してもらいたい・・と思った方は多いでしょう。

すっかり夫に頼るのをやめています。  いや、別にけんかをしているわけではありませんが。
何でも“主人に相談してから・・・”と言う女は嫌いです。
ああいう愛は、放棄してしまったんだなあと・・・
夜中でも独りで帰る車の中で泣けたのはそう気付いたせいです。
by michirudesu | 2005-11-07 09:13 | 映画な日常


好きなことしかしないっっ!!

by みちる
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